え、今どきフロッピー!?レトロガジェット人気が止まらない理由
● 令和にまさかのフロッピー需要?なぜ話題に?
フロッピーディスクといえば、かつてパソコンを使っていた世代にはおなじみの存在。小さな四角いディスクをカチャッと挿入し、数MBしか保存できないのに当時は“最先端”の記憶メディアでした。しかし、その存在はCD、USB、クラウドの登場によって急速に姿を消し、若い世代の多くは「名前は知っているけど使ったことはない」状態に。
そんなフロッピーが、2020年代に再び脚光を浴びているというのだから驚きです。ニュースでも「フロッピー売り切れ」「中古価格が高騰」「実は一部の官公庁で現役使用中」などの話題が取り上げられています。これは単なる懐古ブームにとどまらず、“レトロの再評価”という文化の一部と考えられます。
さらに、アートやDIY、ガジェット改造などの文脈でも活用が広がっており、「古くて新しい存在」として見直されているのが現状です。まさかの再ブームには、単なる懐かしさだけでなく、現代特有の“逆張りカルチャー”やSNS時代の価値観が大きく関係しているのです。
● Z世代がレトロに惹かれる理由
Z世代(1990年代後半〜2010年代生まれ)は、生まれた時からスマホとインターネットがある“デジタルネイティブ世代”。彼らにとってフロッピーディスクは、実際に使ったことがない未知の存在です。その未知のものに対する憧れや探求心が、レトロブームを支えている大きな要因の一つとなっています。
たとえば、「親の昔のパソコンから見つけた謎の四角い物体がフロッピーだった」というようなエピソードをSNSで共有し、バズるケースも多く見られます。実際、InstagramやTikTokでは「#レトロガジェット」や「#フロッピー」で検索すると、驚くほど多くの投稿がヒットします。
さらに、Z世代の価値観の中では「非効率=魅力的」「アナログ=おしゃれ」という傾向も強まっています。クラウドで一瞬にして共有できる現代だからこそ、時間や手間をかけて物理メディアを扱う行為が“新鮮”に映るのです。彼らは懐かしさではなく、新しさとしてフロッピーを体験していると言っても過言ではありません。
● 懐かしガジェットの“体験価値”がアツい
現代では、ほとんどのデータは見えない“クラウド”の中にあります。しかし、かつてのフロッピーディスクやVHS、カセットテープなどは“モノとしての実感”がありました。ディスクを手に取り、ドライブに差し込むという行為は、単なる操作ではなくひとつの「儀式」のようなものでした。
この“儀式的な体験”こそが、Z世代やミレニアル世代の一部にとっては魅力的に映っています。なぜなら、今の生活はあまりにも便利すぎて、物事の“過程”を楽しむ余地が少なくなっているからです。昔ながらのガジェットを操作するという行為そのものが、まるでアナログなエンターテインメントのように再評価されているのです。
YouTubeやTikTokでは「古いPCにフロッピーを挿して起動する音を聞く動画」や「使えないフロッピーにラベルを貼ってインテリア化するDIY」などのコンテンツが人気です。こうした体験を共有する文化が、体験価値をさらに高めているのです。
● SNSが火付け役?レトロブームの裏側
レトロブームの背景には、SNSの存在が欠かせません。今やトレンドはテレビではなく、TikTokやInstagramから生まれる時代。レトロなアイテムを紹介する動画は、視覚的な面白さや独特の雰囲気がウケて、瞬く間にバズります。
中でも「古いものをあえて使ってみた」シリーズは人気ジャンルのひとつ。フロッピーをUSB変換して現代のパソコンに繋げる動画や、文字化けした昔のファイルを復元する挑戦系コンテンツなどは、再生数もコメントも爆伸び。人々の“なぜ今これを?”という好奇心を刺激するのです。
また、企業アカウントや広告にもレトロブームは取り入れられており、マーケティングの切り口としても注目されています。「懐かしい」というキーワードは、購買意欲やクリック率を上げる強力なフックにもなりうるのです。
● フロッピーは再ブームの象徴か、それとも一過性か?
ここまでの再注目にも関わらず、フロッピーディスクが今後メインストリームに返り咲くことは考えにくいのが現実です。そもそも1.44MBしか保存できないフロッピーでは、現代の写真1枚すら入らない。USBやクラウドに比べると圧倒的に不便です。
それでもフロッピーが“注目されている”ことには大きな意味があります。それは、モノに触れることの感覚、古いものの価値を再評価する風潮、そして“効率だけがすべてではない”という気づきです。この潮流は、単に懐かしさに浸るだけではなく、新しい価値を創造する起点にもなり得るのです。
今後、他のレトロガジェット──MD、ゲームボーイ、PHSなども再評価される可能性が高く、フロッピーはその象徴的存在と言えるでしょう。つまり、ただの一過性ブームではなく「次の流行のタネ」として捉える価値があるのです。